麦の秋往復切符は自由席

 

マンションの林立白薔薇の困惑

 

梅雨晴れのまたねがあって握手して

 

原っぱの探検始め草いちご

 

青葡萄どこから声をかけるのですか

 

   つじあきこ

    写真 あきこ・イングリッシュガーデンびわこ大津 

 


雲梯の錆がまだらに芒種かな

 

初めましての夏ローゼルソウ開花

 

ともだちのともだちだからかき氷

 

阿国かも知れずアッパッパーが行く

 

生きてるつていいね斜めに夏帽子

 

    辻 水音

ひとことに心うるほふねぢり花

 

夕涼や苔になりたいひととゐて

 

のうぜんの明るさ生家思ふとき

 

見過ごして戻るヤマボウシの花へ

 

ボサノバの耳をくすぐる夏至夕べ

 

   はしもと風里


夢見るはプラントハンター青岬

 

紫陽花はブルー校則はブラック

 

梅漬けて家計簿付けて明日は晴れ

 

薔薇園をゆったり歩く男傘

 

雨粒が斜めに走る大夏野

 

波戸辺のばら

  写真 のばら・あわじグリーン館にて


夏の朝いしゅに座って笑う子よ

 

おやじギャグ扇風機まであっち向く

 

お揃いの靴で茅の輪をくぐりけり

 

熱い手を握って茅の輪くぐりかな

 

鞄まで清らかにする茅の輪かな

 

    林田麻裕

河鹿鳴く岸辺の家の子だくさん

 

蔦の家鳥語を話す少年と

 

百合の名に鬼や鉄砲・姫・鹿の子

 

緑陰に涌き出る水をおみやげに

 

クワの実の終わりて夏の空があり

 

   火箱ひろ


薫風よ吹け吹け母の虚(ウロ)に吹け

 

母といふ大いなるもの麦の秋

 

紫陽花を撫でをり車椅子の母

 

夏掛けより薄きからだの母ゐます

 

母の喉とほる冷茶の音がうれし

 

   松井季湖

      写真 季湖・柏葉紫陽花


水に入り軽鴨親子てんでんに

 

雨近し茅花の群れの銀色に

 

草むしり捩花だけを残したい

 

梅雨空暗し接岸の潜水艦

 

ウクライナ色の夏シャツ着て友は

 

    おーたえつこ

六月の運動場の見える窓

 

百円の会費しぶしぶ蝸牛

 

総会に三秒遅刻青蛙

 

もじずりのゆるりとほどけゆくゆうべ

 

煙突に腰かけている夏の雲

 

    たかはしすなお