たましひにつかずはなれず冬の蝶

 

小春日や古りて指輪も恋人も

 

追伸の長々とあり帰り花

 

冬薔薇や亡き娘に選ぶロゼワイン

 

冬の星亡き娘へ恋心のようなもの

 

 はしもと風里

煩悩の数か山茶花咲いている

 

流れゆく鴨を見つめる鳩の目よ

 

山彦で返ってきそう彼の咳

 

鯛焼の香りに大工立ち止まる

 

シーチキンシーチキンと鳴く冬雀

 

 林田麻裕


 

アマゾンで届く掃除機冬が来た

 

小春日の長崎弁と島根弁

 

雪ばんば老いた男を連れ歩く

 

廃屋にビナンカヅラの実が赤い

 

朝粥のとろり勤労感謝の日

 

 波戸辺のばら

        写真 のばら(ビナンカヅラ)


山の子よ薪ストーブの香をまとい

 

山羊の乳沸かしてゆるむ霜の夜

 

穴惑いふらふら手ぶらまだ惑う

 

歩く歩くほっつき歩く冬に入る

 

チェロ立てて音楽喫茶初時雨

 

 火箱ひろ

水鳥の羽ばたき激し眠るころ

 

ここあそこどこそこあそこ返り花

 

時雨してまたすぐそこにある晴れ間

 

戦争の何故ばったんこ鳴り止まず

 

話したいこといっぱいで落ち葉降る

 

 おーたえつこ


 

 

零れてこぼれて胸底に積む金木犀

 

虫に花に想ひのこして暮れる秋

 

荒砥石中砥仕上げ砥冬に入る

 

母の時計わたしの時計木の葉降る

 

小春日やうどんちゆるちゆるすする母

 

 松井季湖   写真 季湖(父の遺品)


鳥渡る空のあそこが曲り角

 

婆ちゃんの百年計画おでん酒

 

詰襟の一団が来る冬が来る

 

七五三ビデオの中の子どもたち

 

冬うらら母の羽織をほどこうか

 

 たかはしすなお

山羊右往左往してをる枯野かな

 

父親の大き長靴息白し

 

ここにゐる水鳥たちの司令塔

 

盛塩のてつぺん崩る冬の雨

 

雪催バイオ理化学研究所 

 

 辻 水音


 

兄ちゃんの歯が抜け僕の七五三

 

甘え方とうに忘れて石蕗咲いて

 

花八手父から母へわたくしへ

 

霜晴の水辺古家を開ける音

 

思いつめているかこのごろ海鼠かな

 

               つじあきこ 

             写真あきこ(京都府立植物園)