繭 玉 抄

    林田麻裕

ハワイアン音楽流すカーラジオこの道ハワイに続いていたら

 

父は今ピンクの物に囲まれてプールに沈むように眠って

 

好きになるともういるだけで美しいあなたのどこもため息が出る

 

まっすぐに育った友とくねくねに育った私紅茶一口

 

 牛乳の甘さみたいね君の言う「ありがとう」って「また会おう」って

繋がる五七五⑬

      おーたえつこ   消しゴム版画 辻 水音

 先日、NHKEテレで、「つなげ言葉のバトン~テレビ連歌会~」というのをご覧になっ

た方はいますか?

 ミュージシャンで小説家の尾崎世界観さんが発句を出し、それに二人の歌人がそれぞれ

脇句を付ける。そこから、それぞれ三人ずつラッパーやお笑い芸人、高校生、哲学者、ホス

トなどがチームになって、五七五を繋いで、六句が連になった連歌を作りました。二つの作

品ができたわけですが、ぜんぜんちがうものでした。具体的には忘れてしまいましたが、そ

れぞれの連想で世界が進んでいくのが面白かったです。レギュラー番組にしてほしいものです。

 さて、それと同じようなものを、芭蕉一門の連に見つけました。「芭蕉」(饗庭孝男著 飯

塚書店)にとりあげられている、

 

  木のもとに汁も膾も桜かな 

 

 

という芭蕉の発句で始まる一連です。初折の表六句書いてみます。

 木のもとに汁も膾も桜かな     芭蕉

(お花見の宴会)

   西日のどかに良き天気なり    珍碩(浜田ちんせき 膳所の人 酒堂とも)

(お花見の一日も暮れてゆく。良い一日でしたね)

  旅人の虱かきゆく春暮れて     曲水(菅沼きょくすい 膳所藩士)

(春の暮、華やかな桜人もいるし、虱をかきながらゆく薄汚れた旅人もいるよ)

   はきも習はぬ太刀のひきはだ   芭蕉

(虱をわかしているようなひとに、太刀は似合わない)

  月待ちて仮の内裏の司召      珍碩

(仮の内裏だから、太刀持ちも慣れてないんだよ)

   籾臼つくる杣がはやわざ     曲水

(仮内裏に仕える人たちのための臼も急いで作るのだ)


最期の三句は

 

  医者のくすりは飲まぬ分別     芭蕉

(薬なんかに頼らず、自然にしていたいものだ)

   花咲けば芳野あたりをかけまはり 曲水

(自然のなかに生きる人は花が咲いたら吉野をかけまわるよね)

  虻にささるる春の山中        珍碩

(吉野の山の中を走り回っていたら、虻にさされてたいへんだ)

 

となります。

 

 

 この連句と同じ発句で、別のグループが、別の場所で巻いた歌仙が「芭蕉連句集」(岩波

文庫)に入っています。次にそれの初折の表六句をならべてみますね。

  木のもとに汁も膾も桜かな     芭蕉

   明日来る人はくやしがる春     風麥(小川ふうばく 伊賀上野藤堂家臣)

(明日には花が散ってしまって、お花見に来る人は悔しがるだろうね)

  蝶蜂を愛するほどの情けにて    良品(友田りょうぼん 伊賀上野藩士)

(落花を悔しがる人は蝶蜂をめでる心の持ち主だろうね)

   水の匂いをわづらひにけり     土芳(服部とほう 伊賀上野藩士)

風流人は水の匂いも気になる。茶人のこと)

  くさまくらこのごろになき月のはれ    雷洞(伊賀上野の人)

(茶人はよく旅をする。その旅空に月が美しい。)

   猿の涙かおつる椎の実       芭蕉

(美しい月に猿も涙するのかも。涙みたいに椎の実がぽとりと落ちたよ)

 

 


こちらは、

 

   にじり書きさへならぬ老いの身  良品

(手が震えて筆を紙に押し付けて書くのも難しい年寄りになってしまった)

  降りかかる花に涙もこぼれずや   風麥

(花が散ってしまう。世の無常)

   雉やかましく家居しにけり    土芳

(雉が無常を鳴いている。)

 

 で、あがりです。

 前者は、俳諧七部集の一つ、「ひさご」所収です。「ひさご」は芭蕉の「軽み」という考え

方が強調された句集です。たしかに、前者には重々しさが少なめ、笑いの要素多しです。

 

参考 「芭蕉」饗庭孝男著 飯塚書店

 

   「芭蕉連句集」岩波文庫

季湖ワールド

    写真 季湖



庭のヒメコブシの花がたくさん咲きました。

  今年のさくらは早すぎる

 

      枚方界隈のさくら     写真 すなお

3月9日(木) 近所の早咲き桜と溝の横に咲いていた寒緋桜


3月12日(日) 枚方旧街道に咲いていた寒緋桜


3月16日(木) 12日の早咲き桜と神社の裏山の桜or桃


3月24日(金) 枚方穂谷の池のほとりの桜と公園の桜。

        日当たりのせいか、池の桜の方が良く咲いていた。