朝顔のつる飄々と漂へり

 

甘えんぼだからなりたいゐのこづち

 

寂しさは畳に零るあかまんま

 

草離るとき水にほふ秋の蝶

 

草の露踏んで一日の始まりぬ

 

   松井季湖

        写真 季湖


この場所は私の居場所小鳥来る

 

無花果のタルトひとひら食用花

 

ざわざわと動きやまぬよ鶏頭花

 

台風や夫婦げんかをする元気

 

ウソ話ふんふん聞いて青みかん

 

   おーたえつこ

天高く加藤とスミス表札に

 

大花野小児病棟建設中

 

駅員にぶつかっていく赤とんぼ

 

栗五キロ父の笑顔とやってきた

 

青柿の尻より夕陽色になる

 

              たかはしすなお


 

 

石ころを後ろに飛ばし賢治の忌

 

いわし雲犬を送ってきた帰り

 

バスに乗る野の花包んで新聞紙

 

うっかりと嘴落とす水澄んで

 

秋の風呼び込んで蹴るボール蹴る

 

   つじあきこ

                写真 あきこ

 

   


使ひきる命の量や花芙蓉

 

水の秋尖つて生きろとラジヲから

 

じれつたきロマンス映画夜長星

 

獺祭忌血や肉となる食品群

 

救急室煌々として虫の闇

 

 

   辻 水音

新涼や揺蕩ふ蝶も魂も

 

ブラウスに秋蝶「カナ?」と呼んでみる

 

亡き子よりとどく棘なき秋のバラ

 

心澄むうすくれなゐのコスモスに

 

晩年を迷ひ込んだる花野原

 

 

   はしもと風里


 

賢治の忌朝食までの畑作業

 

コスモスの風よわたしを遊ばせて

 

走る跳ぶ歩く義足や鰯雲

 

ハミングのあとは口笛野菊道

 

天高くみなで尻取り歌合戦

 

   波戸辺のばら

         写真 のばら


何もかも許したくなる秋の朝

 

秋の日差しと洗濯物を取り込んで

 

爽やかや流れるような草野球

 

マクドナルドへ行こうじゃないかバッタ飛ぶ

 

電車とともに秋思が通過いたします

 

 

   林田麻裕

空色の封筒で来る秋の声

 

偶然がいっぱい私 君 蜻蛉

 

引っ越しのたびに紫式部連れ

 

パレットに九月の湖の青いろいろ

 

自然薯は自然薯らしく曲がるのだ

 

 

    火箱ひろ