影法師

       火箱ひろ

 

 鶏に追っかけられて秋がくる

 

 空は空色風は風色小鳥くる

 

 秋の日のどこまでキリンの影法師

 

 稲刈って雀少子化問題も

 

 しんとしてほら冬が来るそんな窓

 

 

  おはようございます

        松井季湖

 

 夏の夜の夢のつづきの眉引きぬ

 

 「ヒロシマ」と表記す蝉の声うねり

 

 普段着にもどる仏壇盆の東風

 

 秋が来ている用足しの五十歩に

 

 鶏頭をポンとおはようございます

 

  私たち

      おーたえつこ

 

 コロナちう名前美し夏の空

 

 猫伸びて伸びて籐椅子からずるり

 

 私たちずっと友だち虹二重

 

 秋日差す白髪にぽやっと天使の輪

 

 肩組んで頬寄せ合って捨案山子   

 

    


  星月夜

      たかはしすなお

 

 色鳥やマスク習慣身に付いた

 

 流星のかけら屋根裏部屋の窓

 

 強面のこのだっこ紐龍淵に

 

 妖精のかそけきおなら星月夜

 

 へこへこの鍋ほとほとと秋茄子

 

 

  遠くなる

       つじ あきこ

 

 黄のカンナ嬉しい言葉探してる

 

 まだいるよ秋がゆっくり来てるから

 

 遠くなる空と友だち花木槿

 

 カフェラテと話たっぷり冬が来る

 

 ついて行く桜紅葉になっていく

  散髪

       辻 響子

 

 豆苗がもぢやもぢや育つ星月夜

 

 十五夜やもののけ深く息を吐き

 

 満月や振り向く猫のオッドアイ

 

 パン耳は色鳥と分け庭じまひ

 

 太ペンで散髪と書き秋日和

 

 


  甘ずつぱ

       辻 水音

 

 椋鳥の点点ソーシャルディスタンス

 

 さはやかに赤子甘ずつぱきものよ

 

 秋川に浸す椰子の実らしきもの

 

 秋晴れて地球かるがる抱へ来る

 

 木の実落つ僕のバイトの着ぐるみに

 

 

 

  団欒色

       はしもと風里

 

 星月夜星の数ほどピアニスト

 

 お月見の部屋に家族が揃はない

 

 虫しぐれ団欒色といふ灯り

 

 紅芙蓉朝のしづくを滴らせ

 

 ステイホーム金木犀の香が遠い

  妖精

       波戸辺のばら

 

 晩夏光シャンディガフにたっぷりと

 

 ゲルニカの女哭いてる秋夕焼け

 

 謎解きのあとの西瓜の種の謎

 

 肉体派と言われて育つパンプキン

 

 妖精の座る切り株星月夜

 

 


  古本

       林田麻裕

 

 好きですと打っては消して夜長かな

 

 古本を一冊買おう涼新た

 

 扇置く凝った料理でもしようか

 

 パスタ茹で上がり秋思と湯を捨てる

 

 君の目の奥に九月を見つけたわ