繭玉抄

            林田麻裕

救急車走れよ走れろうそくの炎のような命を運べ

 

子どもたちの声は海の波のようぶつかり合ってうず潮になる

 

オーケストラより熱い心で告白をしてよじゃないと信じないから

 

カツラではないんだけれどわたくしのカツラが飛んでいきそうな風

 

運命の人よ走って会いに来てメロスのようにただひたすらに

 

 

   百鬼園先生の猫

                おーたえつこ

  別れ霜猫連れ立ちて通りけり

  

  土手の松に月大いなる猫の恋

  

  藪の中に猫あまた居たり春暮るる

  

  庭先を猫歩み居り秋隣る

  

  冬籠もり猫が聾になりしよな

 

   (写真 フリー写真から)

 

 


百鬼園こと内田百閒の猫の俳句って、こんな感じ。わりと離れて見てる。撫でたりしませんって感じ。

 

 

百鬼園先生、ほんとうに猫が好きですか。


 床下で何かが「けえけえ」変な声で鳴く。そこにいた三匹の子猫を引きずり出して捨てに行く。それらが戻ってきたら蹴飛ばして摘まみ上げてまた捨てに行く。猫たちはなにやらむくむくと膨らんでいる。しかも庭には枕のような芋虫がぼたぼた落ちてくる。しまいには真っ白で牛ほどの大きさの猫が戸口いっぱいに立ちふさがって自分を押しつぶしにかかるという、短い、怖い物語を書いてますよね。

川鼠顔を干し居る薊かな

 

犬声の人語に似たる暑さ哉

 

檻の虎見てあれば昼花火とどろ

 

 

毛物飼へる夜怖れのあり枯野人


 ほんとうは、毛の生えた物たちのこと、胡乱なやつらだと思ってませんか。

 

 独り居の夢に尾もあり初枕

 

 

百鬼園先生、ほんとうはご自身が化け猫なんじゃないですか。

 

 

                            (消しゴム版画  辻水音)


松井季湖のフォトアルバム

「ケサランパサランのようなたんぽぽの綿毛」と、送ってきました。

動画もあったのですが、個人の動画はアップ出来ないとの事。残念 (ノД`)・゜・。