その話なかったことにしておでん

 

着膨れて実家だんだん遠くなる

 

昼ひとりみかんぽんかんあんぽんたん

 

如月へ突っ込むハーレーダビッドソン

 

小鳥屋のインコの夫婦春隣

 

 火箱ひろ

暖房ほわほわバスの席明るし

 

山奥の海の化石よ冴返る

 

放散虫積む億年の春の夢

 

てんでんなほう向く男雛女雛かな

 

ビル街の海の底めく朧かな

 

 おーたえつこ


 

隣家よりオライオーライ深雪晴

 

豆まくや猫の和毛の遺る土間

 

猫の目の一途が刺さるバレンタイン

 

リハビリのおつかなびつくり魚は氷に

 

鼻歌が聞こえるちちの春帽子

 

 松井季湖

           写真俳句 季湖


春の雨もうすぐ駅に着いちゃうよ

 

桃始笑(ももはじめてさく)みっちゃんがこ~ろんだ

 

春を呼ぶハートの種をおすそわけ

 

ほろ苦いオランジェット あっ淡雪

 

始末書の提出期限竜天に

 

 たかはしすなお

口金は星型バレンタインの日

 

春兆すペペロンチーノ好きですか

 

〒の赤き自転車囀れる

 

かすれたる轆轤の音や冴返る

 

花菜風顔ほころびて姉妹

 

 辻 水音


 

始まりは木の椅子窓にぼたん雪

 

梅咲いてその寄り道のチョコレート

 

木の芽開く音キックバイクの止まる音

 

ガラス皿溢れるほどに春の月

 

父さんはねと鴬餅を食べながら

 

    つじあきこ 

          写真あきこ・わが家のお雛様


好きなひとの寝息に寒灯絞りけり

 

金星のまたたき激しバレンタイン

 

シクラメン声をかけねば凍ててをり

 

冴返るピアノに十指あそばせて

 

聴き飽きることなきショパン春愁ひ

 

 はしもと風里

サクサクと食べていきましょ春愁

 

行き先は英語の町や春うらら

 

春の森顔の小さい親子かな

 

春の風でご飯を炊こうおくどはん

 

顔だけがタイプなんです春の風

 

 林田麻裕


 

雪明り牛乳瓶のふれる音

 

寒卵ぽとり死ぬ気満々佐野洋子

 

突然の訃報の届く春立つ日

 

クレープをくるんと巻いて春立ちぬ

 

梅ふふむラーメンスープ澄み切って

 

波戸辺のばら

    写真のばら・マンサク