スクラムを組むラガーマン朝の湯気

 

また痛い朝来て寒い顔洗う

 

冬日向母のいた日のちゃんちゃんこ

 

友だちはみんな年寄り冬うらら

 

嫁子ども連れて帰ってちゃんこ鍋

 

   火箱ひろ

寝返りの背中の丸さ火恋し

 

蛇穴にアルゼンチンはこちらです

 

うとうとと冬青空へ落ちにけり

 

セーターを脱いだり着たり旅支度

 

鼻水の垂れて完食讃えられ

 

   おーたえつこ


 

こころ冴ゆ月冴ゆやさし言葉欲る

 

瓶底の果実揺らすや小夜時雨

 

落葉踏む君に執着せぬやうに

 

冬たうらう碧きまなこの澄みに澄み

 

綿虫を指から放ち心に穴

 

   松井季湖

      写真 季湖 果実酒


冬温かホットケーキは魔女が焼く

 

冬靄のスペイン広場黒猫が

 

アレクサとしりとりする子冬近し

 

大輪の青い花咲くカーディガン

 

セーターは眠り続けて八年目

 

   たかはしすなお

露地風へスカジャンの龍立ち上がる

 

よそ行きと共に老いけり姫つばき

 

冬蝶に水の滲みたる野原かな

 

検査着の丈のちよんちよん小六月

 

ゼリービンズ噛めば冬日の深き闇 

 

  辻 水音


 

晩秋の信号心臓の鼓動

 

コーヒーと英字新聞冬帽子

 

これっくらいがいいな踏まれても落ち葉

 

等分にならない不幸落葉掃く

 

冬霧の濃くなる山の声を聴く

 

   つじあきこ 

      写真 あきこ・加茂街道と冬の雲


天国へ送る譜面と冬の薔薇

 

思い出は鮮やかなまま冬林檎

 

良き母であつただろうか冬灯

 

窓開くときに希望を持つ朝も

 

人として好きです背ナに冬日差す

 

  はしもと風里

友人は引っ越し準備片時雨

 

着信にみんなで気付く雪催

 

三世代ポタージュスープ冬の朝

 

クルトンを買いたい気分冬うらら

 

子どもらは冬日に向かい走り出す

 

   林田麻裕


落葉松の黄葉上高地は朝

 

晩秋の珈琲詩人と一杯

 

セーターを脱ぐ今までのわたし脱ぐ

 

晩年を跳んでみたいな冬林檎

 

人間に繋がる電話冬温し

 

   波戸辺のばら

     写真 のばら・穂高連峰